あたたかい家族ごっこ
昔は、近所の子どもたちは家の前の狭い道で年齢関係なく一緒に遊んだものだ。
小さい時は広い道のように感じたが、
大きくなってそこへ行ってみると、
端から端まで大きく3歩で渡れたのには自分でも驚いた。
そんな狭い場所で10人くらいがひしめき合って遊んでいたんだ!
上は小学校高学年、下は幼稚園児まで。
缶蹴り、鬼ごっこ、ドッチボールもしたっけ。
(当時、私の住む地域では、ドッチボールのことを「箱ドッチ」と言っていた)
鬼ごっこの時は小さい子どもは「フーコー」と言って、
つかまっても鬼にならなくてもよかった。
「〇〇ちゃんはフーコーな!」
いつも私はフーコーだった。
自然と縦社会、小さい子や弱い子を思いやる気持ちが養われたと思う。
いい時代だった。
そんな時、近所でいつも遊んでくれる子の誕生会が開かれた。
誕生会と言っても今の時代のようなものではなく、
その誕生児の家へ行ってジュースやお菓子を食べながら遊ぶくらいの簡単なものだ。
いつもの近所の子たちが呼ばれたが、
誕生児の学校での友だちも呼ばれていた。
その学校の友だちの中に、私にとても優しくしてくれるおにいさんがいた。
私にとってもいつもの近所の仲間と遊ぶものではない特別な会になったのを覚えている。
そのおにいさんとはそれっ切り会えないのだが、
ママの家で夜一人で過ごす時間、わたしの中で家族ごっこが始まった。
優しいお父さん、お母さん、そして兄がいる家庭。
兄はもちろん、あの誕生会で会ったおにいさん。
私は一人で何役もこなし、
おにいさんに優しくしてもらった場面を再現していた。
今思い返すと切ない。